・・・・・・・・・・
後で考えるとこの時が一番のターニングポイントだったんじゃないかって思うの。うん、もしこの事がなければ私たちの関係はどうなってたのだろう?
一頻り雄ちゃんの頬をぷにぷにして堪能して私も自分の部屋に戻ろうと思ったの。最後に昔みたいに額に軽くキスをして…勿論今じゃ結構勇気は必要だったけど、雄ちゃんは寝てるし、ね?
で、顔を近づけたその瞬間に、雄ちゃんの枕元にあった携帯電話が突然なりだしたのよ。
ピリリリリッ!ピリリリリッ!
「ひゃっ!?」
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思えばこの時くだらない理由で電話をしてきた悪友に心から感謝をしたいと思う。恐らくこの電話が無ければ琴姉と俺の二人がついていた「嘘」と張っていた「意地」と、そして二人が想っていた「ほんと」の気持ちは分からないままだった可能性が高いからだ。
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ピリリリリッ!ピリリリリッ!
「ひゃっ!?」
頭上から電子音が響く。これは俺の携帯の着信音だろう。なんか変な声も混じってたけど、
ぱちりと目を開けてみたらそこには琴姉のドアップ…え?
な・ん・で?起きたばかりの頭では思考が追いつかない。いや、追いつくのかもしれないけど、考えたくない。
「あ…お、おはよう雄ちゃん」
「うん、おはよう琴姉…で、これは何が如何してこうなったのかな?」
何普通に挨拶してるのかな?まだこれ夜だよね?
簡潔明瞭に説明して欲しいところだね。ていうかしろ、して下さい。えぇ!サラサラした髪の毛がね、顔に当たっててくすぐったいんだけどねっ!なんでこんなに俺達は接近してるんでしょうかね。
「あ、う、うん。雄ちゃんがちゃんと寝れてるかなぁ、って思って。」
それで何で顔を近づける必要があるんだろう?いや、そもそも男が寝てるところに入るなよそんな無防備な格好でっ…昔俺があげた古いパジャマをなんで今も使ってるのかとかも気になるけど、とりあえず…
「琴姉」
この人は…
「琴姉、正座。」
「はい?」
「正座っ!すぐに!」
ダメだこの人。このままじゃ琴姉のお母さん達に申し訳なさ過ぎる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「正座。すぐに!」
雄ちゃんが怒ってる。多分本気で。そ、そこまで怒らせちゃうような事、私やっちゃった?やってないでしょ?
お互い布団の上で正座で向き合う。なんなのかしらこの構図は。
「琴姉…」
「は、はい!?」
「まさかと思うけどさ、その、まさか、まさかブラジャー着けてないとか言わないよね?」
いきなり何を聞いてくるんだこの雄ちゃんは…女の子に聞くことかな、それ?
「いや、そ、それを答えてどうなるのかな?」
「良いから答えるっ!!」
うわ、そんな大きな声出さないでよっ。ご近所迷惑になっちゃうじゃない。
「つ、着けてないわよ。着けたままじゃ苦しいもん。…別に私と雄ちゃんじゃない。そこまで気にしなくても…問題ないでしょ?」
だって雄ちゃんだもん。いくら大きくなって男の人になったって言っても、雄ちゃんの本質は変わってないわけで、それは私にとって愛おしい雄ちゃんなわけで…
別に他の男の人とかじゃないし。いたらこんな格好…そもそも他の男の人を部屋に上げるとか…寝顔を覗くとか、旦那さんじゃないんだからありえないって!!
・・・・・・・・・・・・・・
「つ、着けてないわよ。着けたままじゃ苦しいもん。…別に私と雄ちゃんじゃない。そこまで気にしなくても…問題ないでしょ?」
「問題っ…て」
唖然とした。所詮は俺のことを弟と思って接しているだけなのか、それとも誰にでもこういう振る舞いをしてしまうのか。後者だと思う。
「琴姉…やっぱり琴姉は変わったよ。いくら昔から微妙に天然でも、こういう事を平気でする人じゃなかったよ。」
いや、認めたくなかっただけなのかもしれない。琴姉が大学に入ってどんどんと変わって行ってしまう事を。どんどん俺を置いていってしまうことを。どす黒い感情が腹の奥からどんどんと溢れ出てくる。イライラがどんどん募る。
「…そんなんだから琴姉はすぐに悪い男にだまされてホイホイとラブホテルとか行っちゃうんだろ?」
だから、ついつい余計な事まで口走ってしまう。これだからガキなんだよ俺は。
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「…そんなんだから琴姉はすぐに悪い男にだまされてホイホイとラブホテルとか行っちゃうんだろ?」
な、何を雄ちゃんは言っているのだろう?らぶほてる?悪い男?何の話よ?少なくとも私はそんな変な男について行ったことなんて無いのに。何勝手に決め付けてるのよっ、雄ちゃん相手でも流石にあったま来たっ!
「しっつれいねぇっ!私だってそこの所の分別くらい付きますよぉだっ!大体何よラブホテルってぇ!ベッドが回転するのっ?キラキラしてるのっ?そんな所一回も行った事ないわよ!」
私にとって、ラブホテルなんかドラマか小説の中の世界よっ!雄ちゃんでしょそういう所の常連さんは!
「あぁそうかい。じゃあ部屋でズッコンバッコンかいっ!そうだよ!男が誘われてるって思ったらねぇっ、どうなるかなんて琴姉のほうがよく分かってるでしょうが!琴姉は自分の魅力に気づいてないのかよっ!そんなわけねえよなっ!?」
な、な、なんてはしたないっ!雄ちゃんがそんな変態さんだなんて、いえ、そういえば雄ちゃんは毎日女の子を取っ換え引っ換えしてたんだっけ。そんな人と私を一緒にしないで欲しい。私は雄ちゃん一筋なのに。
「そ、そんなわけなくない、あれ?そんな訳ない?違う、そんな訳ある…でしょっ?今まで男の人とか部屋に上げたこと無いしっ!」
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「嘘だぁっ!」
じゃああのメールは何だというのだ。送ってくるたびに過激な性体験を読まされるこっちの身にもなれって物だ。あんだけ送ってきて今更純情ぶるなんて、な。
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「嘘じゃないっ!知らないわよそんな事っ!男の人の、ア、アレなんて雄ちゃんのしか見たこと無いわよ!」
最後に雄ちゃんとお風呂に一緒に入った小学5年生の時だ。象さんというかお稲荷さんだった。今は…どうなってるんだろう?亀さん?
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「はぁ?カマトトぶってもだめだぜ琴姉!数ヶ月前なんて男を取っ換え引っ換えだったんだろう?」
最後のほうのメールなんて酷かった。何せ琴姉が数人の男を相手取って女王様プレイとか、卑猥な刺青を彫られてピアスも全身に穴をあけられ、大学のトイレに放置とか…読んでるだけで涙が出てきたものだ。…ん?刺青とかピアスの跡なんて琴姉にあったか?
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「だから違うって言ってるじゃない!そもそも彼氏なんて今まで一人もいないわよ!!男の人を部屋に上げたこともないし、ホテルなんか行ったこともない!!」
当たり前じゃない。雄ちゃん以外の男の人と手だって繋いだことないのに。なんで分からないのよっ!
「彼女を取っ換え引っ換えは雄ちゃんのほうでしょうがっ!」
相手の子を妊娠させちゃったってっ!
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「はぁ?俺だって彼女なんていねえよ!」
いたこともねえよっ!琴姉以外に好きになった女もいねえっ!
「「今は」でしょっ!」
「「今までも」だよあばずれ野郎っ!どうせ俺はドーテーですよだっ!」
「野郎じゃないもん、私処女だもんっ!!っこの頑固者!…え?」
「そういう問題じゃないだろっ!このあばずれっ!……は?」
琴姉の表情が固まる。多分おれ自身の表情も固まってるだろう。二人の時が止まった。完全に止まった。琴姉の言葉を俺の脳みそが正しく認識できていない。
「「・・・・・」」
「ちょっと待とう」
「ええ、ちょっと待ちましょうか?」
「琴姉?今なんて言った?」
俺の耳が壊れていなければ、琴姉はとんでも無いことを言った気がする。処女?
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「あ、うん、ごめんなさい。つい問題無いかなぁ…って」
この無警戒さに段々とイライラしてくる。何が問題ないかなぁ、だ。問題大有りだろうがっ!琴姉が変わっちゃったというか、これは昔から変わっていないというか。小さいころならともかく、今はそれなりの警戒心くらい持ってくれ。
「あ~もういいよっ!もう出るからそこ退いててっ!お風呂ありがとうっ!もう寝るからっ!」
「う、うん」
ドア越しの気配が無くなる。まったくあんなに隙があるから変な男と付き合っちゃうんだろう。そっと風呂場から脱衣所に顔を出して、琴姉が視界にいないことを確認。すばやく着替える…って、あ。
「着替え…」
忘れたと思ったのにしっかりと籠に入っている。
「持ってきてくれてたのか」
…少し悪い事をしてしまったかな?
リビングまで戻ると、そこに琴姉はいなかった。可愛らしい字と微妙にポップなイラストで書置きがしてあった。
『ごみ捨てに行ってきます。ついでに明日のお昼ご飯の材料も買ってきますね。雄ちゃんは先に寝ててください、もうお布団敷いてあります…あと、さっきはごめんなさい。』
「寝ててください、か。そういえば俺はどこで寝ればいいんだ?」
2LDKだから、空いてるもう一つの部屋だと思ったんだが…
「…はずれ。布団敷いて無いじゃん」
琴姉が使っていない部屋には本当に何も無い。物置代わりなのか、複数の大きなダンボールがあるだけで布団など敷いていない。クローゼットの中も探してみたけど布団の姿かたちすらない。
この部屋でないとすると、他にこのマンションにある部屋は…
「ま、まさかね?」
…当たり
昼間に少しだけ見せてもらった琴姉の部屋。電気がついていないので暗いが、その奥。ベッドの手前にもう一組布団が敷いてある。まさかここで寝ろ、と?
「…勘弁してよ。」
天然なのかなんなのか分からないけど、こりゃ琴姉相当のものだ。確かにこんな事を他の男にしたら、男は一瞬で「落ちる」。琴姉が狙ってるのか素なのか…
「多分、いや間違いなく素だろうね。」
折角敷いてくれたのは悪いけど、移動させてもらおうかな。幸い隣の部屋もしっかりと掃除してあるみたいだし。
「じゃおやすみなさい。」
誰に言うわけでもないけどさ。俺はずっと前から好きなんだぜ琴姉。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「じゃおやすみなさい。」
丁度私がごみ捨てと買い物から戻ってきたタイミングで雄ちゃんも寝ちゃったみたい。今は夜9時30分。まだ寝るには早い時間だけど…仕方ないよね。明日受験だし、疲れてるかもしれないし。
「うん、おやすみなさい」
わずかに聞こえた雄ちゃんの声に返事してリビングに荷物を置く。多分私に言ったんじゃなくて独り言なんだろうけどね。
明日は雄ちゃんも朝が早い。お弁当作ってあげなきゃいけないから私も早く寝なきゃね。
さっさとお風呂入って…
「はぁ…」
風呂場で体を洗う。よく考えてみるとさっきまでここで雄ちゃんが裸でいたのよね?雄ちゃんの裸なんて昔見たきりだけど、いまはもっと逞しいんだろうなぁ男の子だもんね。さっきは怒られちゃったし。
ふと私自身の体を見てみる。私も変わった。経験皆無とかはともかく、体つき自体は女っぽくなったと思う。まぁ…
「この胸は疲れるだけだけどね。」
元々遺伝なのか、胸ばかり大きくなるこの体はあまり好きじゃない。可愛い服とかは着れないし肩もこるし、何より男の人からの視線が嫌だ。
「雄ちゃんの視線は全然嫌じゃないんだけどね~」
ハァ、と再びのため息。仕方ないって言っては元も子もないんだけどね。
風呂から上がり、青色のパジャマに着替える。このパジャマは昔からのお気に入り、雄ちゃんから昔もらったものだ。疎遠になる前だからそれこそ中学のころから使ってると思う。
「身長が伸びてないって事なんだけどね」
女性ものの場合、胸の部分に合わせると裾が長くて、裾に合わせると胸が入らない。パジャマなのに胸が苦しいっていうのはやめて欲しい。だからずっとこの男物のパジャマを愛用してる。
それでも最近はボタンを一つ緩めないと厳しくなっちゃってるんだよね。
「失礼しま~すっと、雄ちゃんもう寝ちゃったかな?」
そっと部屋のドアを開けて入る。起こしちゃかわいそうだしね。
…って
「…あれ?いない」
雄ちゃんの姿は無いし布団も無い。空き部屋に移動したのかな?そういえばさっきの「おやすみなさい」って挨拶も隣部屋のほうから聞こえたような気がする。隣部屋はそこまできれいに掃除しきれてなかったんだけどなぁ。
「大丈夫かしら?」
雄ちゃんはアレルギーとか鼻炎とかは持っていないはずだけど、そりゃ心配に決まってる。それに掃除してないとか恥ずかしずぎるし。
「おじゃましま~す。あ、いた。」
そっと空き部屋に入る。案の定雄ちゃんは布団に包まって寝ていた。
「可愛らしい寝息立てちゃって…こう見ると変わってないんだけどなぁ…」
ほんと、幸せそうな顔で寝てるよね。
「あ~ぁ、よだれ垂らしてる。」
可愛いし、格好いいし…昔は私の旦那さんになってくれるなんて言ってくれたのになぁ。
「この色男め。このこのっ!」
寝ている雄ちゃんの横に座ってちょんちょんと頬を突いてみる。勿論雄ちゃんを起こさない程度に。
「本当に大好きなんだよ、雄ちゃん」
・・・・・・・・・・・
次(嘘とほんとと意地っ張り14 )
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「いやぁさぁ、そんなに色っぽい顔されちゃもうコッチのほうが元気になっちゃうし。受験勉強が忙しくてさぁご無沙汰なんだよね。だめ?琴姉?」
コッチってどっちですか!?
ついつい私は雄ちゃんの、その、あそこ、を凝視してしまう。勿論ズボンに収まっているので「生」ではみえないけれど・・・って生って何よ生って。
それにあぁ、やっぱりご無沙汰?なんだ。それで彼女さんとも別れちゃったのかしら?
…って、そこじゃない、そこじゃないよ琴音っ!
「な、何が「ダメ?」なのかなぁ?」
これ、私誘われてるんだよね?そうだよね?雄ちゃんに「そういう事」を誘われてるのよね?いいのかな?明日試験なのにいいのかな?性急過ぎない?いや、さっき私もおんなじこと考えたけどさ、幾らなんでも今からって。私のプランでは大学に入った段階で雄ちゃんに抱いてもらって、処女だったって言って、婚約して結納して、新婚旅行は国内のほうが良いな。豪華な寝台列車に乗って、スイートで北海道に・・・・ってまた妄想しちゃった!
-いいの?ほんとにいいの?良いに決まってる?
「そりゃ琴姉・・・うん、まぁ・・・うん。」
って、ドキドキして聞いてみた反応は微妙。
え、何それ?なんでそんなに微妙な反応なの?期待した私が馬鹿?馬鹿なのね?なんというか、雄ちゃんもなんというかびみょ~な顔しちゃってるし。
「・・・・」
「・・・・」
お互いお見合い状態。コチコチと時計が時を刻む音だけが聞こえてくる。
「じ、冗談だよ琴姉。だいたい琴姉と俺じゃ釣り合わないよ。」
釣り合わない?うん、確かに私みたいな処女と雄ちゃんみたいに経験豊富な男の子じゃ釣り合わないよね。なんだか雄ちゃんの言葉で私達の時間が動き出したような気がした。
「あ、あはは、うん。そ、そうなんだ。…って何の話してるのかしらね私達。さっさとお風呂入って寝ちゃいましょうか?明日早いんだしね。」
慌てて残ったご飯を食べて、二人分の食器をシンクにまで持っていく。何が「そうなんだ?」なんだろう?自分自身で意味が分からない。うわぁ~ん、恥ずかしくって雄ちゃんの顔見られないよぉ!
あ、でも何だかんだ言って雄ちゃんと普通に話せてる気がする。内容はともかくとして…やっぱり雄ちゃん良いなぁ、変わってない。好きだよ雄ちゃん。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あ、あはは、うん。そ、そうなんだ。…って何の話してるのかしらね私達。さっさとお風呂入って寝ちゃいましょうか?明日早いんだしね。」
シタパタと琴姉がキッチンへと消える。あれは完全に引いてたよね。
「やっちまったぁ~」
一人残されて天を見上げる。くそっ、LEDの照明がまぶしいぜ。
あぁ呼べよ。呼びたかったらチキンと呼ぶがいい。無理。絶対無理。言ってるこっちが耐えられない。というか、空気に耐えられない。釣り合うわけないでしょうが。俺みたいな童貞高校生と経験豊富なお姉さまとじゃ…って、なんであんな会話になったんだろう。
「・・・」
…あ、俺が発端か。内容はともかく、随分とお互い離れてた割にはうまく話せてるよね。
「ゆ、雄ちゃんは先にお風呂入っててぇ!もう沸かしてあるから~」
キッチンの向こうから琴姉の声が聞こえる。なんだか上ずって聞こえる気がするけど気のせいだろう。
ぐだぐだしてても仕方ない。切り替えよう明日は受験なんだ。さっさと風呂に入って寝てしまおう。
「じゃ先に入れさせてもらっちゃうよ~」
さて、風呂なわけだ。風呂である。琴姉がいつも使っているお風呂場である。
別段変わったところがあるわけでも無いが、どうしたってきょろきょろ見回してしまう。
きれいに整理されたお風呂セットに石鹸類。あぁ琴姉のいい匂いのもとはこのシャンプーか?んっ、これは剃刀?や、やっぱりこれは同棲してた男の…って女性用?あぁ無駄毛処理用の…
「やべっ…」
ここで琴姉毎日裸になって体を、大きな胸を…ダメだ想像しただけで…生々しい。
「・・・よし」
バシャリッ!
くぅ~冷水は効くねっ
チャポン
「ふふんふふんふんふん♪ちょっとだけよ♪」
いい気持ちだ。ついつい鼻歌も出てしまう。
それにしても長さんのギャグは完全に何度もリハーサルをかねて作られた物だったなんて…そりゃあ面白いに決まってるよね。なんで繰り返し同じことをやっているだけなのに飽きが来ないんだろう?逆に笑いを堪えることが出来なくなってくるし。当時PTAが見せたくない番組に入ってたと思うけど、それは純粋に面白すぎて勉強しなくなるからじゃないかって今の俺は思う。茶さんの「ちょっとだけよ」とかだって、笑いの問題だろう。少なくとも今のように性や暴力が過激すぎて…っていうのとは違うよね。
あぁドリフターズ全盛期のころに生まれたかった。あ、でもそうすると琴姉とは会えない訳で…まぁ結局今も琴姉とは微妙な関係なわけで…なんか思考が負のループになってしまっている気がする。
「だめだこりゃ!」
ザバリと湯から上がる。あぁ長さん、不甲斐ない俺を天国から見守ってくれよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「だめだこりゃ!」
「えっ何が?」
つい聞き返してしまう。なにがダメなのかしら?そう、私は今脱衣所にいる。
雄ちゃんはお風呂に入ったのに、肝心の着替えを脱衣所に持ってきてなかった。そういうちょっと抜けてるところは昔から変わらないわよね。
雄ちゃんがベッドの横にもう一つ寝床を作ってから、着替えのシャツと、その…パ、パンツを持って脱衣所に入る。けしてパンツを抱きしめたり、つい、ついよ?クンクンと匂いを嗅いでなんかいない。いないったらいない。
「はいぃ!?えっ、琴姉そこにいるの?」
「え?いるよ?」
慌てた雄ちゃんの声。何をそんなに慌てているのかしら?ちゃんとお風呂も掃除しておいたし。変なところなんて無いわよね?リンスでも無くなってたかな?
「…あのさぁ、久しぶりに会ってこんなこと言うのも何なんだけどさ、琴姉警戒心無さ過ぎ。一応年頃でヤりたい盛りの男が裸一丁で、擦りガラス越しにいるんだよ?少しは気をつけてよ」
え、あっ…そうか。そうよね。
雄ちゃんも、外見とかはイメージとそんなに違ってなかったから、なんだか昔に戻ったみたいで安心してて…つい忘れちゃってたけど、雄ちゃんもそうだもんね。男の子だもんね。
「あ、うん、ごめんなさい。つい問題無いかなぁ…って」
他の男の人とは絶対にこんな事出来ないけど、雄ちゃんだったらぜんぜん問題ないと思う。弟みたいな存在だから?ううん、私が雄ちゃんの事が好きだからかなぁ。雄ちゃんの気持ちを考えていなかったのはよくなかったと思うけど。
次( 嘘とほんとと意地っ張り13)
半分死んでいましたが、半分は生きていました。RINです。
今年から新しい環境になりましてようやく慣れてきたところです。
細々とこれからも書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
前(嘘とほんとと意地っ張り10)
・・・・・・・・・・・
「なっ」
何を言うのかこの人は。
自分であれだけ滅茶苦茶なメール送っといて「私変わった?」は無いだろ常識的に考えて。それとも何か?男とヤリまくってる事は琴姉にとってたいしたこと無いのか?
「前に送ってきたメール忘れたの?あれ送っといて変わってないなんてよく言えるね?」
半分あきれて、半分嫌味っぽく。険を込めて。
分かってる。これが逆恨みだって事くらい。琴姉には琴姉の考え方があるわけだし。
でも感情ってのは正直で、どす黒いものが噴出しそうなわけで・・・
明日受験なのだからこんなことやめておこう、とか、言ったところで意味無いじゃんとかの冷静な気持ちがふと出てくる。
ふと琴姉のほうを見ると、箸を握り締めたまま、また何かぶつぶつ言っている。
「そ、そうね。私も大学生だから・・・ね?そういう雄ちゃんだって中々『遊んで』たんでしょ?」
ああ、そう言えばそういう設定になってたっけ、自分が情けなくなってくる。
所詮俺はガキ。琴姉は大人。
俺は大人になっていく琴姉に、精一杯の意地を張ろうとして、結局どうすることもできないガキなんだ。ただ琴姉は気づいてない。琴姉は俺も同じように変わったって思ってるのか?頬を赤く染めて、正直色っぽい、何を思い出してるのさ琴姉!
「…ま、まぁ受験もあったからそこそこだけどね。何?琴姉まさか誘ってるの?」
半分本気、半分冗談。
たぶん今の俺の表情はすごく醜いだろう。別に琴姉が悪いわけじゃない。こんだけ美人なんだ、付き合いたいと思う男なんて10や20はいるだろう。そう、悪いのは琴姉じゃない、じゃないんだけど…やっぱ未練がましいだけなんだろう、俺が。だから俺は意地を張る。精一杯の作り笑いで意地を張る。
「さささ、さ、誘ってるって、えぇえ!?」
俺の冗談交じりの言葉に慌てるような声の琴姉。あれ?たくさんの男との経験がある割には初心な反応。意外。
「いやぁさぁ、そんなに色っぽい顔されちゃもうコッチのほうが元気になっちゃうし。受験勉強が忙しくてさぁご無沙汰なんだよね。だめ?琴姉?」
下ネタ…言ってるこっちが恥ずかしくなる。なんだよ?ご無沙汰って、今までにそんなことないだろうよ。
はぁ・・・
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